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荒汐部屋 先代おかみ 鈴木 ゆかさん

―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。

今回ご登場いただくのは、中央区唯一の相撲部屋「荒汐部屋」の先代おかみとして、23年間にわたり運営に携わる鈴木ゆかさん。部屋を起こしてから今日まで「荒汐部屋」を守り続け、日本橋浜町の変化を見つめてきた鈴木さんに、大相撲の未来と日本橋浜町への想いを語っていただきました。

相撲のイメージを、ここ浜町から変えていく

―両国の「時津風部屋」から独立し、先代親方の荒汐崇司さんが2002年に開設した「荒汐部屋」。改めて、日本橋浜町に部屋を起こした理由は何だったのでしょうか?

一言で言うなら、偶然ですね。独立してから何十件も内見をしたのですが、なかなかいい物件に出会えず、妥協もしながら江東区の物件に決めようとしていました。
ところが契約直前のタイミングで、たまたま知り合いから「浜町の物件が空いた」という連絡をいただいて。見に行ってみたら、ここだ、と。
江東区の物件は、今思えば無理があったんですよ。狭いし、天井も低い。とにかく必死だったので、視野も狭まっていたんでしょうね。

でもここは、土俵をつくるのに十分な広さもあるし、環境も申し分なかったんです。
当時、この建物は織物屋さんの染色工場で、稽古場がある一階は駐車場でした。まず最初に土俵をつくりたくて、地面を1mほど掘って、ダンプカーで土を何十トンも入れて。そんなところから「荒汐部屋」の歴史が始まったんです。

―「荒汐部屋」といえば、稽古場を覗けるガラス張りの外観が特徴的ですよね。

いまの親方になってつくり変えたものですが、開設当時からまちの人が覗けるように大きな窓を設けていたんです。

当時は相撲業界がとても大変な時期で、相撲部屋がまちにできることを訝しげに思う人が少なくありませんでした。だからこそ、力士たちが必死に稽古している姿をまちに開いて、相撲のイメージを少しでもここ浜町で変えていこうという先代の想いが、いまも受け継がれているんです。

そのおかげか、道端で会うと「おかみ〜」って声をかけてくださるご近所の方もいて、好意を持ってくれる方が徐々に増えてきたと感じますね。

 現在、部屋に所属するお弟子さんは何名いらっしゃるんですか?

いまは15人です。これでもいまの相撲界では多い方なんですけど、昔は60人、70人が所属する部屋も珍しくなかったんですよ。

大相撲の人気はここ数年ぐっと高まっていて、チケットの売れ行きを見てもそれは実感しています。でも、相撲の道で食べていこうという若者はなかなか増えません。百何十キロもある力士同士が、数百キロっていう時速で頭からぶつかっていくんです。ただでさえ大変ですし、稽古も辛いし、関取になるまで給料も出ない。いまの「荒汐部屋」はたまたま人数に恵まれているだけで、いつ衰退するかわかりません。

それでも、こうして相撲部屋を構える以上、相撲という文化や魅力をこのまちの人たちに伝えていくことが、私たちの役目のひとつなんじゃないかなと思っています。

 

相撲の文化と魅力を、日常の風景として届ける

―相撲の文化や魅力を伝えていきたいとのことですが、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。

中央区のスポーツイベントや学校関係の催し事が多いですね。
大相撲は年に6場所ありますが、そのうち3場所は地方での興行なので、力士たちがここで過ごすのは一年の半分ほど。旅ガラスのような生活を送る力士にとって、まちのためにできることは限られています。それでも最近は、「荒汐部屋」のちゃんこ長と一緒に料理教室を開催したり、数人の力士と「浜町マルシェ」に参加してちゃんこ鍋を提供したりしています。

ちゃんこは相撲特有の文化ですし、着物姿の力士も日本に残していきたい大切な文化です。
こうしたものを見せていくのも大事だと思っていて、「浜町マルシェ」では部屋を起こした当時のようにもの珍しげに見られることもなくなってきました。「荒汐部屋」がこのまちに馴染んでいるんだなと、そう感じます。

 

変化し、進化し続けるまち日本橋浜町

―浜町に拠点を設けて23年。いまのこのまちの魅力をどういう点に感じますか?

「荒汐部屋」ができた2002年当時と比べて、このまちはずいぶん変わりました。変化を寂しがることはよくあると思いますが、浜町は全くそんなことがありません。むしろ、どんどん進化していると言った方がしっくりきますね。

まちを見渡すと、若い家族が増えて活気に溢れていますし、浜町エリア各所で面白いお店が次々と誕生し、まちの表情がより豊かになっています。
ゆっくり、でも確実に、魅力的なまちに生まれ変わっていると実感しています。

―最後に、浜町に期待することを教えてください。

個人的な夢でもあるんですけど、このまちに、いろんなスポーツ好きが集まれるスポーツバーがあったらいいなと思います。ワールドカップの時には、パブリックビューイングでサッカーファンが賑わいますよね。そんなイメージで、例えば5月場所のタイミングで大相撲を流して、相撲好きが集まれるような場所ができればと。両国国技館も近いので若い相撲好きも来るかもしれませんし、まちの人たちの交流の場になるんじゃないかなと思っています。

また、今後、力士が地方にいる間にここ「荒汐部屋」を使って、相撲の文化や魅力を発信したり、理解を深めていけるようなイベントを開催したいと考えています。
昔ながらの文化が多く残っているので、そういうところから相撲に触れるきっかけを提案してみたいです。

 

荒汐部屋

ホームページ:https://arashio.net/tour.html

[取材日:2025.11.4]

写真:立花智 北浦汐見 文:柴山英樹

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