HAMACHO.JP
  • about
  • contact
  • privacy policy
大 小

大金鳥店 社長 鈴木 健治さん

―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。

創業明治25年、130年以上の歴史を持つ鶏肉専門店「大金鳥店」。店内ではあらゆる部位の鶏肉や卵を取り扱い、老舗料理店や飲食店への卸に加え、一般客向けの販売にも力を入れています。老舗の誇りを守りながらも進化を続ける大金鳥店の三代目・鈴木健治さんに、お店への想いと日本橋浜町への想いを語っていただきました。

 

同級生の妻と帰郷し、シェフから卸の道へ転身

―鈴木さんは、もともと「KIHACHI」のシェフとして働いていたそうですね。

調理師専門学校を卒業し、KIHACHIの一期生として働いていました。小網町で居酒屋を営む両親のもとで育ち、料理が身近な環境でしたから、自然と食の道を選んでいましたね。5年間KIHACHIで修行を積んだ後、蒲田のフランス料理店を紹介してもらい、そこで12年ほど二番シェフを務めました。

中学時代のクラスメイトである妻と結婚し、お店の近くで暮らしていましたが、子どもが小学校に上がるタイミングで日本橋浜町へ。「地元に戻りたい」という妻の希望だったんです。

―そのタイミングで、奥さまの実家である大金鳥店を継ぐ決意をされたのですね。

食を扱う仕事という意味では同じですが、畑が違いますからね。最初は、自分なりのやり方を模索するのに夢中でした。店頭に立つ中で感じていたのが、「今日は何を作ろう?」と悩まれるお客さんが多いということ。17年培ったシェフとしての知識と技術を活かすならと、レシピをアドバイスするのが接客時の習慣になっていきました。

ある時、妻と娘に「毎回お客さんに同じ説明しているから、紙にレシピを書いて貼っておくといいんじゃない?」と提案されて。レシピに加えて妻作成のPOPもどんどん増えていき、今のにぎやかな店のスタイルになったわけです(笑)。娘には、「お父さんのレシピは、家庭で作るのには手間も時間もかかり過ぎる」と言われ…。娘は管理栄養士でもありますから、チキン南蛮やカモ肉のコンフィなど本格的なメニューを簡単に作れるレシピを提案してくれるんですよ。

―ズバリ、大金鳥店のこだわりを教えてください!

今の時代、加工の方が売れますし、作業的にも大変な解体から手掛ける鶏肉専門店は減少傾向にあります。でも、義父である会長がこだわり続けているのが丸鶏の解体。良い品を仕入れて解体から加工までを一貫して行い、料理に合わせた切り方で提供しています。うちの鶏肉は、火が入るとふわっと膨らむんですよ。焼き鳥屋にある部位は全部そろいますし、希少部位も取り扱っています。

スーパーなどに並ぶものより金額は高いものの、リピーターが多いのは鶏肉に真面目に向き合ってきたからこそ。常連のお客さんから「大金のお肉だと、子どもがよく食べる」と言われると、やっぱりうれしいですよね。 “まちの冷蔵庫”として皆さんに愛されている実感があります!

 

食を通じた豊かな暮らしを提案し、地域の活性化にも尽力

―まちの飲食店や住民の皆さんともお付き合いが深いそうですね。

日本橋浜町には、「大金鳥店」と「鳥割烹 大金」、大金という名前がつく店舗が2店舗あります。経営は別ですが、うちの先代の会長(初代)と大金割烹の先代がいとこ同士なんですよ。明治から令和までまちを見守ってきた歴史がありますから、自ずと地域とのつながりも深いんです。

長年のお得意先であるイタリア料理の「リストランテ アル・ポンテ」さんは、毎年クリスマスの時期に骨つきモモ肉を焼いてくれます。それを当店で販売するんですが、昨年は1週間で800本も売れたんですよ!居酒屋の「ザ・築地」さんは、年の瀬にたくさんの差し入れを持ってきてくれて。「仕事終わりで暇だし、材料余っちゃったから」なんて言ってたけど、我々への心遣いなんですよね。持ちつ持たれつの良い関係が築けていると思っています。

―大金鳥店では、普段から「リストランテ アル・ポンテ」さんのお総菜を販売されていますよね?

当店は基本的に生の食材しか販売できないのですが、他店で作っていただいたものを販売することはできる。リストランテ アル・ポンテさんをはじめ、お得意さんを巻き込みながら販売の仕方もどんどん進化しています。

お客さんとの会話から生まれるアイディアも多いんですよ。
「たまには料理を休みたいな」という主婦の方の想いを聞き、妻は、串差し加工した焼き鳥肉で「週に一度の焼き鳥パーティー」なるものを考案。キッチンで焼いたものをテーブルに出すのではなく、ホットプレートで焼きながら楽しむんです。もちろん、担当はお父さん(笑)。“お母さんが料理を休める日”になると、評判も上々です。

―「中央区青少年対策日本橋五の部地区委員会」では副事務局長を務めているそうですが、どんな想いで活動されているのでしょうか?

一番の目的は、子どもたちの健全な育成。昔ながらの人情味が残る浜町界隈ですが、新しい住民の皆さんには何のつながりもないわけです。そんな中で、頼れる存在でありたいというのが委員全員に共通する想い。イベントを通して顔を売り、困ったときに助けてくれる居場所があるということを知ってもらいたいと思っています。

 

伝統を守りながら進化を続ける日本橋浜町は、誰が見てもいいまち!

―子どもの頃から日本橋浜町を見てきた鈴木さんにとって、このまちはどのような印象ですか?

地元を一度離れても「やっぱり浜町がいい」と戻って来る人が多いですし、新しい住民もどんどん増えていますよね。内から見ても外から見ても、“良いまち”なんだと思います。

まだまだ伸びしろのあるまちだからこそ、期待も大きい。私は中央区ラグビーフットボール協会の理事を務めていて、子どもたちにタグラグビーを教えているんですが、芝生の上を素足で歩かせたいんです。子どもたちが思いっきりボール投げができるような施設ができたらいいなあって。例えば、屋上に芝生の運動場がある大きな映画館とかね。たくさんの人が訪れるような施設があれば、それに波及して新しいお店や飲食店もどんどん生まれて、まち全体がさらに活気づくんじゃないかと期待しています。

大金鳥店

住所:中央区日本橋浜町2−5−6

営業時間:

月〜金  9:00-19:30

土    9:00-18:30

定休日:日曜・祝日

HP:https://www.rugnet.jp/store/419/

[取材日:2025.2.28]

写真:北浦汐見 文:濱岡操緒

PAGETOP