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動物と暮らしやすいまちづくり会 会長 大山 幸子さん

 ―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。

 

今回ご紹介するのは「動物と暮らしやすいまちづくり会」で会長を務める、大山幸子さん。20代の頃に保護した一匹の子猫をきっかけに、浜町界隈で40年以上も動物に関わる活動に尽力してきました。「動物と関わりながらまちや人にも貢献したい」と話す大山さんが活動を続ける理由、日本橋浜町への思いをお話していただきました。

 

子どもの頃からの思いが保護猫活動の原点に

―大山さんは40年以上前から、このまちで保護猫活動を続けていらっしゃいますね。

初めて保護したのは、水天宮の前にいた子猫でした。当時は、この辺にもたくさんの猫が暮らしていたんですよ。今のように行政が関わるような体制はありませんでしたから、猫好きの方たちと協力し合って保護猫活動を続けてきました。

子どもの頃、飼い主のいない猫を見かけるたびに「救いたい」と強く思っていました。加えて、昔は何十万頭という猫が殺処分されてしまう現実があり、私たち動物好きからすると苦しくて仕方のない時代でしたね。

―今でも、浜町界隈で暮らす猫はいるのでしょうか?

数は少ないですが、全くいないわけではないんですよ。中央区で暮らす地域猫は、約30頭。浜町公園にもいますし、蛎殻町にはヤマト君という黒猫がいます。なかなか人前に出てきてくれないので、出会えたらラッキーかもしれません!

活動を始めた頃は、保護した猫は動物病院で避妊去勢手術をしてもらい、その後は地域猫として育てていたんです。でも、時代とともにまちの様相が変わってエサやりの苦情や糞尿の問題が増えてきていたため、徐々に地域で育てるという選択は少なくなっていきました。今は、保護猫のほとんどを里親に出しています。

―コツコツと活動を続けてきたことで、幸せに暮らす猫が増えたのですね。

地域猫が減ったのは、平成17年に創設された「動物との共生推進員制度」の存在も大きいでしょう。個人ボランティアや獣医師、動物愛護団体といった動物に関わる人々が構成員となり、地域ぐるみで動物愛護対策に取り組むようになったんです。

個人的な理想をいうと、まちの風景に溶け込む猫がいたらいいなと思うことはあります。歩いていて、猫と出会えたらやっぱりうれしいじゃないですか!ただ、ロードキルやウイルス感染、動物虐待などの心配もありますし、猫の安全を確実に保障することはできませんからね。

 

一人一人の思いが集まれば、大きな力になる!

―「動物と暮らしやすいまちづくり会」は、共生推進員のメンバーで設立したそうですね。

動物との共生推進員制度を母体とし、平成27年に中央区の協働事業をきっかけに設立したボランティア団体です。「人と動物が共生できるまちづくり」のための方法を区に提案するため、共生推進員の有志4名で立ち上げました。当時、中央区で問題となっていた犬の糞尿や鳴き声といったトラブルを解決し、飼い主のマナーやペット防災について広く区民の皆さんに知ってもらうという目的が出発点になります。

現在は区の協働事業から委託事業へと発展しましたが、そのきっかけを作ってくれたのが活動を応援してくれた中央区の保健所です。「犬のしつけ方教室」や日本橋浜町エリアマネジメント主催の「HAMACHO Dog Fest」も、保健所からのお声掛けがあって参画することになったんですよ。

―「HAMACHO Dog Fest」は、大山さんにとって思い入れのあるイベントだと聞きました。

昨年で4回目を終えましたが、回を重ねるごとに住民のニーズや課題が見えてきましたし、動物愛護の啓発だけでなく、まちのイベントとしても良いかたちになってきたという実感があります。昨年は、500人以上ものお客さまが来場してくれたんですよ! 中央区や「日本橋浜町エリアマネジメント」の皆さんをはじめ、いろいろな団体が手を取り合ってつくり上げ、大きなイベントに成長させることができました。

動物と暮らしやすいまちづくり会では、正会員15名それぞれの得意分野を生かしてわんわんパトロール、保護猫活動、地域イベントへの協力、動物に関する相談支援なども行っているんですよ。頼まれると断れないタイプで、どんどん活動の幅が広がっていましたね(笑)。

 

―動物に関する相談支援は、どのような内容が多いのでしょうか?

ここ最近増えているのが、高齢者や障害のある方がペットを飼えなくなってしまったり、飼い主が亡くなられてペットが取り残されてしまったりという相談ですね。マンションの増加などによって動物の飼育数も増えてきているので、今後もさまざまな支援が必要になると思います。

 

私たちの活動を応援し支えてくれる日本橋浜町は、大好きなまちです!

―動物たちへの並々ならぬ愛情ゆえ、資格も取得されていますね!

きっかけは、東日本大震災でした。仙台にいるお世話になった獣医師の先生からペットの被災状況を聞いたこと、亡くなったペットの遺影の前で涙を流す夫婦を見たこと。災害が起きたときの準備をしておけば、守れる命があると思ったんです。「ペット災害危機管理士®1級」「愛玩動物救命士」を取得し、現在は「ペット防災ゴールドマスター」資格と、「災害復興心の絆 ペットオーナーズサポーター」「ペットロスケアマネージャー」取得のために猛勉強しています!

動物に関わる活動をしていて気づいたのは、動物も救いたいけれど人に寄り添う活動もしたいということ。この想いが、活動の原動力になっているのだと思います。

―動物と暮らしやすいまちづくり会の今後の展望を教えてください。

今後は、ペット防災の啓発により力を入れていきたいですね。今年のHAMACHO Dog Festでも、大々的な防災イベントを企画する予定です!

大勢の人が協力し合えるネットワークのハブであることも、会の存在意義だと思うんです。行政や警察署、町会、保護団体、個人ボランティアをつないで今よりもっと動物に優しいまちに、全ての人と動物が気持ちよく暮らせるまちにしていきたいですね。

―50年近く浜町界隈で暮らしてきた大山さんにとって、このまちはどのような印象ですか?

昔ながらの伝統と新しい文化が融合しているのが魅力。長く住んだ分変わったところはありますが、それでも根底の部分は変わらないと感じます。町会の垣根を越えた連合会全体の結束力もありますし、新しい人を受け入れる懐の深さもある。だから、いろいろなイベントがあちこちで生まれ、盛り上がりを見せるんでしょうね。私たちの活動が広がったのも、まちの皆さんが温かく応援してくれるから。本当に大好きなまちです!

 

 

動物と暮らしやすいまちづくり会

2016年設立。中央区に合った、人と動物が共生できるまちづくりを考え、その方法を行政に提案していく事を目的として設立。中央区と協働で「犬のしつけ方教室」「飼い主のいないネコの譲渡会」の運営、動物に関する相談支援を行う他、動物愛護の啓発活動、ペット防災などのアドバイスも行う。

公式HP:https://www.hcfa.jp/

 

[取材日:2024.3.27]

写真:北浦汐見 文:濱岡操緒

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