株式会社イーネット 代表取締役社長 西岡修さん
―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。
今回は日本橋浜町にオフィスを構える株式会社イーネットの代表取締役社長 西岡さんにインタビュー。イーネットさんが手掛けているのはコンビニなどに設置されているATM。24時間、いろいろな金融機関のカードで利用できる“みんなのATM”です。キャッシュレス化が進むなか、西岡社長には次なるアイデアがあるのだとか。またIBM時代から30年以上!浜町界隈で仕事をし、現在は住まいも浜町という西岡社長におすすめスポットをたっぷり教えてもらいました。
ピンチはチャンス。みんなを支えるインフラとしてのATMをつくる!
―あのコンビニATM「E-net」の会社が浜町にあるなんて知りませんでした。
イーネットは1999年に創業したコンビニATMの元祖です。さまざまな銀行のカードが使えるATMがあったら便利だよねということで、日本IBMやファミリーマート、銀行が出資して設立されました。現在、提携金融機関は約110社、全国に1万3千台のATMを設置しています。設置場所もコンビニだけでなく、東京メトロの駅やスーパーなどと広がっています。
―ご当地言葉で話すATMがあったり、外国の銀行で発行されたカードも使えたり、ユニークな工夫もされていますね。
地域に根ざしたATMを目指しているので、ご当地言葉で挨拶をするATMも各地で展開してきました。三重県ではIターン促進のため、三重県のプロモーションビデオをATMのサイネージで流したり、福岡県ではイーネットATMの利用手数料の一部を九州北部集中豪雨災害の義援金として寄付するキャンペーンを行ったりとさまざまな形でATMを活用しました。インバウンドのお客さんのニーズの高まりから海外発行のカードで日本円が引き出せるようにしたりと、イーネットならではのサービスも充実させています。
―ATMにもいろいろなことができるんですね。いま大きなキャッシュレス化の波が来ていますが、業界はピンチなのではないでしょうか?
ピンチはチャンスです。間違いなくこれからキャッシュレスの時代がきますし、私自身ほとんど現金を使わない生活をしていますが、現金へのニーズがすぐになくなることはないと思います。日本は災害なども多く、なにかあったときに頼れるのはやっぱり現金なんです。イーネットはそれに最後の最後まで答えられる会社でいたいです。
―いま考えておられる戦略をすこしお伺いしてもいいですか?
いま日本全国には18万台ほどのATMがあるんですが、これから10年でそれが半分くらいになると予想されています。また2024年に登場する予定の新紙幣に対応するため、ATM機械も入れ替える必要がある。銀行にとってはすごいコストですよね?そこで入れ替えのタイミングで、イーネットのATMを使いませんか?と提案させていただいています。
―まさにピンチはチャンスですね…!
キャッシュレス化は大きな波です。でもこれを逆手にとって、もっともっと便利なATMを作り出していけたらと思っています。
歩いていて発見があるのが面白い。西岡社長の推しランチスポット3店。
―西岡さんはお勤めもお住まいも浜町ということで、この近辺にはかなりお詳しいと聞いています。
私はもともと日本IBMにいまして、箱崎に本社ができた1989年からこのエリアで働いているので箱崎、人形町、蛎殻町そして浜町には愛着がありますね。浜町はすごく歴史のあるまちなので、ストーリーがあるスポットが点在しているのが面白いです。たとえば新大橋は、関東大震災で火事が起こった時に多くの方が避難したことで命が助かったことから別名“お助け橋”と呼ばれていたり、浜町公園に「清正公寺」があるのはかつて細川藩の藩邸があったことに由来するとか、人形町には西郷隆盛さんのお屋敷跡があるとか。歩いているだけで発見があって楽しいです。
―歴史スポットが満載ですね!富士屋本店さんにもよく行かれていると聞いています。
富士屋さんはすごく好きですね。最近はテイクアウトをやっていらっしゃるのですが、母体が酒屋さんということでワインも一緒に買えるんです。ソムリエの加藤さんが、私の好みも抑えながらテイクアウトする料理に合わせて選んでくれるので、とてもいいセレクトをしてくださいます。しかも価格も良心的で。富士屋さんは「全然儲かりません」とおっしゃっていますが(笑)。
―ちなみに富士屋本店さんで絶対に食べるべきメニューってありますか?
イカ墨コロッケとレバームースは鉄板ですね。なんでも美味しいですが、まずはその2つを食べてほしいです。
―このあたりでお勤めが長いということで、ランチのお気に入りもありますか?
IBM時代から箱崎にある天ぷら店「つじ村」にはよく行っています。実は今日も行きました(笑)。昼は1500円とかで天ぷら御飯や天丼を出されていて、少し高めかもしれませんが絶品ですごくおすすめです。それから本場の味にすごく近い博多ラーメンが味わえる水天宮前の「しばらく 日本橋店」さん。私が博多の出身で、中高時代福岡の西新というところにある「しばらく」に通っていたのですが、日本橋店の店長さんはなんとそこで修行された人で話も合うのがうれしいです。あとは中華料理の「来々軒」さんもすごく好きです。だいたい店の一番人気の肉野菜炒めをオーダーします。
―ランチ情報ありがとうございます!お腹が減りました。浜町は新しい飲食店もどんどん誕生していますよね。
新しいお店ができるのは楽しみですね。ずっとパン屋さんができたらいいなと思っていたので「ジャンゴ」さんができたのはうれしかったです。浜町は古さと新しさがミックスされたまちだと思うので、これからも古いものを大切にしつつ、新しいものを取り入れていくようなまちになったらいいと思います。
―西岡社長は働くだけでなく、浜町に住んでいらっしゃるということですが。
浜町に住んでみて思ったのは、平日はビジネスマンで賑わっているけれど、土日は住人たちでより賑やかだということ。富士屋さんも地元の人が来るので土日のほうが混んでます(笑)。それがなんだかいいなと思います。ここで働く人も暮らす人も、なにかの縁があって浜町に集まってきている。コロナの影響で今はなかなか難しいかもしれませんが、イベントなどを通してお互いにもっとコミュニケーションをとって、助け合ったり、交流していけたらいいなと思います。
株式会社イーネット
[取材日:2021.3.2]
写真:鈴木優太 文:井上麻子