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落語家 三遊亭 楽生さん

―日本橋浜町。かつては、広大な武家屋敷が広がっていた古くから続く江戸の街。歴史と伝統を受け継ぎながら、変わりゆく街の息遣いを、そこで働き暮らしを営む人々の言葉を通して魅力を紐解きながらお届けします。今回は三遊亭円楽師匠の総領弟子でもある浜町在住の落語家 三遊亭楽生さんにお話を伺いました。

落語を通じた浜町との出会い

― 浜町在住だそうですが、浜町を拠点に選んだ理由は何だったのでしょうか。

2007年から住んでいますが、理由としては本当に縁ですね。
浜町に来る前は師匠のお宅近くの南砂町に長く住んでいました。今日の取材場所の竹岡商店さん、うちの一門がお世話になっている呉服屋さんなんです。本店が砂町にありまして、浜町にお店を出すと聞いて、さらに店の上の部屋を貸すよと言ってくださって。ちょうど引っ越しを考えていた時期だったのでこれは渡りに船だなと。これが浜町で生活するきっかけとなりました。そのあと結婚して子供も生まれましたが、浜町から離れられず、今は浜町公園近くにおります。
浜町はとにかく移動がしやすくて住みやすい街です。地下鉄が4本通ってますからね。都内各所はもちろん、埼玉への移動でもとても助かっています。

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― 浜町の好きなところやお気に入りのお店などはありますか。

賑やかすぎないというのも、この街の良いところですよね。飲み屋さんもどんちゃん騒ぎっていうよりは、品があるというか、若い方も落ち着いている方が多いような気がします。
越してきてから随分変わってきて、ちょっと一本入った路地にお店ができていたりだとか。そういう発見の楽しみはあります。意外と浜町はそんなにお店が多くないですから、一つのお店に通うと顔も覚えてくれたりするのでそれも嬉しいことです。最近では「富士屋本店」さんや二丁目の中華料理屋さんによく行きます。
あとは自然が多いところ。僕は埼玉の岩槻出身なので、当たり前のように緑や田んぼが広がっているところでしたが、東京に来ると自然を感じられるところは少ないですよね。そういう意味では浜町は浜町公園という大きい公園もあるし、緑道もあるし、緑が多い。子供を育てるにあたって土と緑は大事にしていたいです。アスファルトの上で転ぶのと土の上で転ぶ、近くに公園があるのとないのでは全然違います。あと、隅田川沿いも整備されて綺麗になりました。隅田川は散歩には持ってこい。川風にあたるも良し、草木を楽しむも良し、少し歩けば色々なデザインの橋を楽しむことができます。

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もっと気軽に落語を楽しんでほしい!

― 浜町にまつわる噺はありますか。

古典落語の「転宅」は浜町が舞台になっています。間抜けな泥棒がお妾さんにまんまと騙される噺なんです。浜町は隣が芳町っていう賑やかな花街があったせいか、黒板塀に見越しの松、お妾さんが住む妾宅があったり。今はほとんどなくなってしまいましたが料亭があったり。僕のお客さんで親御さんがその時代に浜町で料亭をやっていたという方がいます。その頃の時代は川沿いの料亭屋さんに新内流しの方たちが来ていたそうです。粋な街です。

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― 19歳という若さで落語家を目指そうと思ったきっかけは?

大学に落ちたからです(笑)。もともとはテレビ局に行きたかったんです。高校の頃、生徒会をやっていて文化祭など企画も担当したのですが、それがまぁ楽しくて。その延長線上にテレビの世界がありました。当時は大学出ないといけない世界なんだと勝手に思っていました。今考えるとそんなこと全然ないんですがね。大学落ちちゃった、じゃ、もう好きなことやろうと。
うちの師匠(三遊亭円楽)のファンだったんです。知的で色々なことが出来てマルチに活動していたので、憧れでした。よし弟子入りしよう。単純でしょ。厳しい世界だというのは人から聞いたり本を読んで知っていたので、入門してものすごく辛かったらやめちゃおうって、浅はかでしょ(笑)。
当時、円楽師匠(5代目三遊亭圓楽)、談志師匠(7代目立川談志)、志ん朝師匠(3代目古今亭志ん朝)って錚々たる方々が会場を湧かせていた。若手だったたい平師(林家たい平)、昇太師(春風亭昇太)が会場を引っ掻き回している。お客さんを泣かせたり、笑わせたりしている一体何だこの世界はって。目から鱗でした。毎朝師匠の自宅に行って前座修業をして、午後は師匠のカバン持って出先について行く生活でした。それまで僕は実家暮らしだったので、全くの別世界。辛い前座生活でしたがいい思い出です。

― 素朴な質問ですが、どのように噺を覚えるのでしょうか?

落語の稽古って一対一でつけてくれます。弟子のために師匠が一席やってくださる。それを録音して覚えます。そのあと、上げの稽古といって師匠に聞いて頂いてお許しが出れば高座にかけていいということになります。
でも昔はテープレコーダーがないので聞いて覚えるしかないんですよね。
三遍稽古といって3回稽古してもらって、4回目は自分で噺をする。すごい記憶力だと思います。3回で覚えてしまうというよりは、日頃から聞いていてほとんど頭に入っていたなんて聞きます。日頃から落語を聞いているかというのが大事なんですよね。それに落語って台本がないんですよ。口伝なんです。そのせいか噺もその師匠その師匠で違う味があるというか。ですので同じ噺を聴き比べても面白いかもしれません。
ありがたいことに最近は若いお客さんも増えてきています。浜町も若い方が気軽に行ける料理店が増えてきましたが、落語ももっと気軽にいらして頂ける、そんな場所が増えても面白いと思っています。
昔から落語を聴いている方だけでなく、初めて落語を聴くという方にも楽しんで頂けるよう、落語の前にちょっと落語の解説を入れてみたり、分かりにくい言葉を変えてみたり、時事ネタを挟み込んでみたり色々挑戦しています。
東京って落語会がすごく多いんですよ。東京かわら版という演芸雑誌を見てもらうとわかりますが、1日に都内だけで10軒20軒はざらで多い日には30軒やっています。場所も色々で、お蕎麦屋さんや、喫茶店やホール。神奈川、千葉、埼玉など東京以外の関東圏でも増えてきました。落語の未来は明るいです。

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新しい人にも優しい街

― 今後の浜町エリアに期待していることがあればお願いします。

浜町って前へ前へって出るタイプの街ではないと思うので、どっちかというと帰ってくる場所ですよね。
そんなにたくさんの人たちが外から来るわけでもなく。ですので、コミュニティとしてもそんなに大きいコミュニティではないと思う。かといって外から来た人によそ者扱いもしないですし。僕も外から越してきた人間なので大きなことは言えませんが、新しく浜町に越して来た人たちには、町会の楽しさも知って欲しいです。
地域の人と人のつながりって今は希薄になってきていますよね。例えば隣の人に挨拶をしないとかが当たり前になってきています。浜町はそんなことはないと思うし、そういうところは変わって欲しくないです。なんでだろうって考えると浜町は町会がしっかりしているからなのかなって思います。お祭りや年越しなど諸々のイベントを町会の方が切り盛りしてくれる。そうしたイベントを通じて人と人との繋がりが生まれる。そんな浜町が好きです。もちろん町会の皆さんの支えがあってこそ。感謝しています。僕は土日が仕事なのでなかなか参加できていないですが、町会行事には関われる限りは関わっていきたいと思っています。
そういう意味で浜町に求めることは、外から来た人々にも今まで通り優しい街であって欲しいですし、縁あって浜町に住んだ方々たちには、どっぷり浜町色に染まってほしい(笑)。町会行事に顔出してみたり、参加してみたり、時には手伝ってみたり。イベントが多い分、人手が必要なときは絶対ありますから。特に町会は若い人大歓迎って言っていましたよ(笑)。みんな可愛がってくれます。
ここ竹岡商店でもたまに落語会をやっています。ここの若旦那も町会で頑張っていますので、落語を楽しむだけでなく、町会のこと色々聞けますよ。
これからも若手の一人として、浜町を盛り上げていけたらと思っています。

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三遊亭 楽生ブログ「三遊亭楽生の楽花生畑」
http://rakusho.jp/
[取材日:2017.2.23]
写真:鈴木優太 文:小野彩

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