三菱マテリアルトレーディング株式会社　代表取締役社長　野尻洋さん

―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。

今回は日本橋浜町Fタワービル内に本社を構える三菱マテリアルトレーディング（株）で代表取締役社長を務める野尻洋さんにインタビュー。野尻さんは昨年2021年4月に着任されたばかり。野尻さんが感じた日本橋浜町の印象やこれからどのようにまちと関わっていきたいかなどを語って頂きました。

自社の商材で地域と関われているのが嬉しい

―最初に三菱マテリアルトレーディングとはどのような会社なのか教えてください。

戦後間もない1947年（昭和22）に三菱マテリアルグループの総合商社として誕生しました。非鉄金属、金属加工品、自動車部品、半導体、電子材料、建設資材など、モノづくりに必要な幅広い分野の製品を取り扱い、国内外20以上の拠点で事業を展開しています。ここ日本橋浜町に本社を構えたのは1998年（平成10）。今年で24年になります。

―Hama Houseなどで純銀粘土PMCを使ったワークショップを開催されているので、御社の名前を耳にしたことがある人も少なくないと思います。

PMC（Precious Metal Clay）は、1991年に三菱マテリアルが世界で初めて開発した貴金属粘土です。金あるいは銀を含んだ、主にアクセサリー製作用途の材料で自分の手で金属を加工できるのが特徴。BtoB（企業間取引）がビジネスのメインの弊社において、数少ない一般顧客向けの商材です。そのPMCをきっかけに社名を知って頂けるのはとても光栄なことです。

―昨年10月に開催された「HAMACHO Dog Fest」では、ワンちゃんのネームタグ作りに参加される飼い主さんたちも多く、とても好評でした。

それはよかったです。実は、こうした取り組みを行っているということをこちらの本社に来るまで知らなくて。地方の工場では、地域のイベントに参加するというのはよく耳にしていたのですが、まさか、大都会東京のど真ん中で地域の皆さんと社員が自社の商材を使って関わりをもっているなんて、正直驚きました。

しかも、アクセサリーだけではなく、ペットのネームタグとは。なるほど、そうした使い方があるのかと。他に一般消費者向けとして、純金カードがあるのですが、これももっと手に取って頂ける場があると嬉しいです。

―カードではないですが、純金でしたら、例えば町会のお神輿の上に置かれる鳳凰に御社の金を使うなどいかがでしょう。

それもいいですね！　さまざまなアイデアをまちの皆さまから聞いてみるのもいいかもしれませんね。「人と社会と地球のために」という言葉が三菱マテリアルグループの理念に掲げられています。まさに、本社のあるこの日本橋浜町のために我々ができることをもっと具体的に考えるのもありです。これは楽しみになってきました。

上下左右関係なく人やまちと交流を深めたい

―野尻さんは昨年4月に社長に就任されましたが、それまで、ここ日本橋浜町にはどんな印象をお持ちだったのでしょうか。

歴史のあるまちで、オフィスビルが立ち並ぶ…ということはもちろん分かっていました。

てっきり、働く人がメインのまちだとばかり。実は、数年前に、旧知の友人から浜町に引っ越しをしたと連絡がありまして。「都心でとても便利だし、思っていた以上にいいまちだよ」と自慢気に話してくれたので、そのときに、暮らす人も多いのだと分かりました。それと、相撲部屋があるというのも驚きでしたね。

―このまちで働くようになって印象に変化はありましたか？

私は朝の7時頃には出社するのですが、利用している都営新宿線の浜町駅からオフィスのあるビルまでいろんな道を通って歩くのが好きでね。歩きながら、緑豊かな浜町公園や隅田川など、広々とした空間が意外に多いことに気づきました。

日本橋浜町エリアマネジメント主催で新大橋のたもとにある関東大震災避難記念石碑の清掃を行ったと耳にしたので、実際にどんな石碑なのかと見にも行きました。思っていた以上に大きな石碑で、びっくり。我々が生まれるずっと前に起きた震災の歴史を目の当たりにすることができました。と同時に、震災から100年近く経った今、忘れかけた歴史に新たに光を照らす取り組みをされる、この地域の皆さんの土地を愛する思いに触れることもできました。浜町の昔と今を少しずつ肌で感じています。

―表通りから見えない場所にも、歴史の面影が残るのもこのまちの魅力ですよね。

そうなんです。妻が古地図を見るのが好きなので、休みの日に一緒に古地図を片手に街歩きを楽しむのもいいなと。二人とも都内でも歴史のある城東エリアが好きで、以前は入谷に住んでいたこともあったんです。浅草近辺も好きで三社祭はよく見に行っていました。浜町は神田祭ですよね。浜町でのお祭りを見るのも楽しみです。

―浜町界隈でお気に入りの場所やお店は見つかりましたか？

私、こう見えて飲み歩くのが大好きなんです（笑）。このご時世で残念ながら、その楽しみもお預け状態。ただ、先ほどお話した浜町在住の友人に、以前、連れて行ってもらった『寿司克』さんは私のお気に入りリストに入っています。今は蛎殻町にあるのですが以前は浜町にあったとか。寿司もつまみもお酒も最高です。

それから、先日『BRIDGE』のランチ特集を見て足を運んだ『シェ・アンドレ・ドゥ・サクレクール』のグラタンもアツアツで病みつきになる味でした。どちらのお店も美味しくて、それでいてアットホーム。居心地のよさを感じる雰囲気もこのまちの魅力ですね。早く、飲み歩きをしてお気に入りの居酒屋を開拓したいです（笑）。