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UDS株式会社 代表取締役会長 梶原文生さん

―日本橋浜町。かつては、広大な武家屋敷が広がっていた古くから続く江戸の街。歴史と伝統を受け継ぎながら、変わりゆく街の息遣いを、そこで働き暮らしを営む人々の言葉を通して魅力を紐解きながらお届けします。今回登場いただいたのは、まちづくりにつながる企画・設計・運営に取り組んでいる「UDS株式会社」の梶原文生会長。2019年2月に浜町でオープンした「HAMACHO HOTEL&APARTMENTS」についてお話を伺いました。

デザインとシステムによるまちづくり

ーまずは御社の企業理念をお聞かせください。

「世界がワクワクするまちづくり」を事業ビジョンに掲げ、ホテルや飲食施設、商業施設などを通したまちづくりに国内外で取り組んでいます。社名の「UDS」は「Urban Design System」の略称で、日本語で言うならば「新しい都市をデザインとシステムで創る」といった意味合いになります。
UDSはもともと設計事務所として創業しました。一般的な設計事務所の場合だと、建築設計や内装設計といった「設計」のみを担当することがほとんどです。しかし、UDSの場合は事業企画やプロジェクトマネジメントなどの「企画」や施設の「運営」までを手掛けるのが特徴です。
「設計」「企画」「運営」の各分野を別々の会社が担当すると、認識の齟齬が生まれ足並みが合わないことも起こりえます。
ホテルを例に挙げると、掃除や接客といった運営面を意識せず設計されるケースも少なくありません。こうなると、建物は見映えするけど、スタッフから「使いにくい!」という意見が挙がったりする。結果的に、宿泊者は居心地よく過ごせなくなります。
私たちは、それぞれの分野を一手に引き受けているから、思い描いた事業を進められることができるんです。

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ーこれまでどのような事業に関わってきたのでしょうか?

たとえば「コーポラティブハウス」事業の企画や設計です。「コーポラティブハウス」とは、入居希望者の方々が事業主となって、設計者や建設業者の手配を行う「自由設計」の集合住宅のこと。自分たちの住まいづくりの過程で隣人たちと信頼関係を築かれていき、やがてコミュニティや住宅への愛着が生まれます。この仕組みを分譲住宅地に応用した「コーポラティブヴィレッジ」も弊社が得意としていた事業のひとつ。
「いい場ができれば、いいまちにつながる」というのが、私たちが手がける施設の方針でもあります。

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点と点を結ぶ「HAMACHO HOTEL&APARTMENTS」の仕掛け

ー近年はホテルの設計や企画にも携わっていますね。

2010年に京都市で開業した「ホテル カンラ 京都」は、企画・設計・運営を担当しました。このホテルは京都の伝統的な住宅方式である町家をヒントにした、細長い客室の「マチヤスタイル」が特徴です。その翌年、おなじく京都市で開業した「ホテル アンテルーム 京都」は、「京都のアート&カルチャーの今」をコンセプトにしています。そのほか、東京都台東区の「BUNKA HOSTEL TOKYO」や沖縄県宮古島の「HOTEL LOCUS」など実績を増やしてきました。いずれの施設もレストランやバー、ショップなどを併設し、まちにひらかれた複合施設となっており、宿泊者と近隣住民との接点が生まれる仕組みを取り入れています。
2019年2月には日本橋浜町で、浜町のまちづくりの中核となることを目指した「HAMACHO HOTEL&APARTMENTS」のホテル部分「HAMACHO HOTEL」を手がけさせていただきました。

ーHAMACHO HOTELを企画・設計するにあたり、浜町にどんな印象をもちましたか?

大きな通り沿いに高層ビルや低層ビルが並ぶ開発地である一方で、ちょっと小路に入れば、かつての屋敷町だった風情が残っていますよね。自然豊かな浜町公園や蛎殻町公園は、まさに都会のオアシスです。
また、浜町神社をはじめ神社が点在していたり、ものづくりが根づいていたり、歴史深い地域だということが伺えます。これらはとってつけたようなものではなく、地元住民の生活から生まれ、そこから現代まで受け継がれてきたもの。浜町は、文化が「自生」している地域なんですよ。
ただ、魅力にあふれた地域ではありますが、それら魅力のつながりは浅く、いわば「点」と「点」でしかなかったように思います。
様々な魅力を秘めているのに、それを生かさない手はありません。HAMACHO HOTELは、仕掛人である安田不動産さんが掲げる浜町のまちづくりコンセプト“「手しごと」と「緑」のみえる街”を体現するホテルとして、「点」と「点」を「線」で結ぶ仕掛けを盛り込んでいます。

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ーその仕掛けとはどのようなものなのでしょうか。

浜町は緑の多い街並みですから、そこに無機質なホテルが建ってしまうと景観にまとまりがなくなってしまいますよね。そのため、HAMACHO HOTELの外構には多くの植栽を施し、街並みとの調和を図っています。些細なことですが効果は結構大きくて、公園や街路樹など緑の流れに沿って、人の流れができていっていると感じます。
また、手しごととの出会いも意識しています。一階のチョコレートショップ「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」で販売される商品は、職人の丁寧なしごとによるもの。カフェを併設しているだけでなく、今後ワークショップなども開催していく予定です。このショップを通じて、地元の人たちと宿泊者の間になにか接点が生まれるといいですね。
また、ものづくりの街だからプロダクトとの相性もいい。HAMACHO HOTELの特別な客室である「TOKYO CRAFT ROOM」は、国内外のデザイナーと国内のつくり手がコラボレーションしたプロダクトが家具や客室のアイテムとして次々に追加されていきます。宿泊者は、随所に手しごとを感じることができるわけです。プロダクトの一部は、実際に購入することも可能です。

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コミュニティの熟成を見守っていきたい街

ーホテル宿泊者からの浜町の評判はいかがですか?

ホテル近くに成田・羽田空港行きの直通バスが出ているバスターミナルがあるため、海外からの旅行者もよく利用されるのですが、みなさん満喫しているような印象です。
ホテル周辺には、神社や相撲部屋、下町文化など興味をそそるような要素に恵まれていますから。

ー今後浜町に期待していることがあればお聞かせください。

ホテルを利用した海外の方の反響が表しているとおり、グローバルな街になっていくのではないかと思います。街の活性化をけん引してくれる安田不動産さんというリーダーもいますし。
理想としては、少しでも多くの地域住民に浜町の魅力に気づいてほしい。それをきっかけにコミュニティの絆が深まると、街はより一層魅力を放ちます。コミュニティが熟成すると、外部の人たちも惹きつけられるはず。そうしていいお客さんが集まれば、いいお店もどんどん増えていきます。5年後、10年後に浜町がどんな姿になっているのか、いまから楽しみですね。

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HAMACHO HOTEL&APARTMENTS
https://hamachohotel.jp/

[取材日:2019.4.26]
写真:丸山智衣  文:名嘉山直哉

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