フーレップ動物病院 院長 井上 龍太さん
―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。
今回はフーレップ動物病院の井上龍太院長にお話を伺います。医師として浜町のペットの健康を守りながら、毎年10月に区立あやめ第一公園で開催される「HAMACHO Dog Fest」で講演するなど、ペットと健やかに暮らすための情報発信にも積極的な先生。動物愛あふれる優しい井上先生に、浜町でペットが健やかに過ごすコツや、まちの印象を聞きました。
何でも相談できる浜町のペット総合施設
―フーレップ動物病院さんは2001年のクリスマスに開業されたんですね。
そうなんです。最初はここではなく、現在の浜町三丁目のアパホテルの近くで開業しました。できるだけ早く開業したかったので、年内にオープンしようと思ったらクリスマスになって(笑)。現在の場所には2014年10月に移転したので、今年が丸21年になりますね。
―現在はビルまるごと、1階がトリミングサロン、2階が病院で、上にはペットホテルやドッグランもあって、まるでペットのための総合施設ですね。
獣医がそばにいるサロンとホテルなので、安心感はあると思います。例えば結構お年寄りのワンちゃんは、普通のサロンだと扱いに困ってしまうんです。心臓が悪かったりすると、施術中に何かあった時、大変なことになってしまうので。そういうことで、前々から何かできないかなと思っていました。ドッグランでは週に何度かワンちゃんのトレーナーさんに来ていただいて、犬の保育園も開園しています。
―とりあえずこのビルに来ればなんでも相談できますね。先生が診察する動物の種類は決まっているんですか?
基本的には犬と猫、ウサギ、フェレット、ハムスターまでにしています。でもかつて勤務していた病院は、尊敬していた先生のところだったんですが、看板に”小鳥から象まで”って書いてありました。だからなんとか診てくれと言われたら、嫌だとは言えないんですが…。一度亀を診た時は、甲羅に体をひっこめちゃうもんだから、どうしようかまいっちゃいました(笑)。特に爬虫類や鳥類は、専門のところに行かれるのをおすすめします。
都会でペットが快適に過ごす方法
―人間でいう風邪みたいな感じで、犬や猫に多い病気ってあるんですか?
犬は皮膚と耳のトラブルが多いです。基本的に犬って外国からきた種類たくさんいて、日本の高温多湿の環境って得意じゃないんです。あとやっぱり外でいろいろなものを嗅いだり食べたりしちゃうので、感染症の対策は大切。寄生虫やウイルスなど、予防医療もきちんとやっておくといいと思います。
―浜町ってすごく都会ですが、こういう環境でペットが健康に生活するために気をつけてあげるといいことなどありますか?
それもやはり皮膚のトラブル。マンションなどの住まいはどんなにきれいに掃除しても、夏場はダニが増えるのでシャンプーはこまめにしてあげるといいです。またお散歩も、特にチワワなどの小型犬は、外の物音が怖くてしょうがないんです。あの身体の小ささで、例えば隣をオートバイが通ったりなんかしたら、すごく恐怖なんです。お散歩に出て一歩も動いてくれないという声をよく聞くんですが、お家の中で元気に走り回っているのなら心配いらないと思います。
―井上先生は浜町で毎年開催されている「HAMACHO Dog Fest」でも、こういったお話をしてくださっていますよね。
診察の時にしか動物病院に行くことはないと思うので、こうして話ができる機会をもらえてありがたいと思います。また浜町は町内会の活動がしっかりしているんですが、自分は仕事が忙しくてなかなか参加できなくて。イベントに参加することで地域になにか還元できたらと思っています。
―他にも獣医さんとして地域の活動に参加されていたりするんですか?
中央区の保護猫の不妊去勢手術を受け入れています。人形町のあたりは特に外で暮らしている猫が多くて、箱崎のあたりに個人で保護施設を立ち上げた方がいらっしゃるんです。その方たちが中央区に掛け合って、保護猫の手術に補助金が出るようにされたんですね。自分自身はたいしたことはやっていないんですが、こういった活動は続けていきたいですね。
浜町は人のコミュニティが魅力。自分も貢献していきたい。
―浜町で病院をやってみて、この10数年いかがですか?
もともと北海道のオホーツクで牛の獣医をしていたのに、東京のど真ん中でやっていけるのかなって思いが正直あったんだけど。住民の皆さんのペットに対する健康意識も高いし、人付き合いも多くて温かいので、助かっています。
―先生が気に入っているワンちゃんの散歩コースはありますか?
隅田川テラスです。川沿いをぐるっと歩くのが好きです。この夏にうちにラブラドールが来たのですが、まだ子供でめちゃくちゃやんちゃなので、あまりたくさん散歩できないんです(笑)。いつか優雅にまちの中を歩きたいですね。
―先生が思う浜町のいいところってどんなところでしょうか?
人と人とのコミュニティが深くて、それがまちを発展させているところです。浜町はファミリーだけじゃなく、お店や会社、昔から長く暮らしている人も多い。どんどん人が入れ替わっていく場所じゃなくて、地域に根ざしている人がいるから、町内会などのコミュニティも活発なんじゃないかと思います。今はないかもしれませんが、浜町公園に20年以上前から「浜町朝犬会」というのがあって、ワンちゃんの飼い主同士のすごく強いコミュニティがあったんです。彼らが区に掛け合ったことで、高速道路の下にドッグランができたり。こういう人と人とのつながりは、これからも無くならないで欲しいですね。
フーレップ動物病院
住所:中央区日本橋浜町2丁目-48-5
電話:03-5695-1122
診察時間:(月~金)午前 9:00~12:00 / 午後 15:00~19:00
(土・日)午前 9:00~12:00 / 午後 13:00~19:00
休診日:木曜日
WEBサイト: https://www.fureppu-ah.com
[取材日:2022.11.17]
写真:北浦汐見 文:井上麻子