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nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO シェフ・ショコラティエ 村田 友希さん

―日本橋浜町。かつては広大な武家屋敷が広がっていた、古くから続く江戸のまち。歴史と伝統を受け継ぎながら変わりゆくまちの息遣いと魅力を、このまちで働き、暮らしを営む人々の言葉を通して紐解いていきます。

HAMACHO HOTEL の一階奥にある「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」は、カカオ豆から手掛けるチョコレートが自慢の専門店。15歳からお菓子作りの道を進み始めたシェフ・ショコラティエの村田さんに、日本橋浜町に念願のお店を作るまでのストーリーや、チョコレート作りにかける想いをお話いただきました。

お菓子づくりが大好きな青年が出会った、感動的なチョコレート。

―村田さんは京都のご出身なんですね。ショコラティエの道に進むきっかけはなんだったのでしょうか?

実家は祇園祭の鉾が通るような京都のまち。祖父が着物の下絵を描く仕事をしていたり、父が美術教師だった影響もあり、職人というものが身近な存在でした。なかでも料理やお菓子づくりが好きで、15歳の時にはパティシエになると決意。定時制の高校に通いながら洋菓子店で働きだしました。

 

7年間ほど勉強させてもらった後、次は東京に出ようと思っていたんです。しかし東日本大震災の影響で職探しが難しくなってしまって。

そんな時、福知山にある「洋菓子マウンテン× CELLAR DE CHOCOLAT by Naomi Mizuno」を率いる水野直己シェフの講習会で助手をする機会がありました。水野シェフは世界的なチョコレートの大会「​​​​ワールドチョコレートマスターズ2007」で日本人初の総合優勝を果たしたすごいショコラティエ。彼の仕事はとても綺麗で、チョコレートも驚くほど美味しくて、こんなに違うものなのかと感動しました。

東京に行けなくて悩んでいた僕に水野シェフは、自分の店で預かると言ってくださいました。彼は人を育てることを大事にしていて、2年後に僕が東京へ行けるようにとチョコレートの技術を一から授けてくれました。師匠との出会いがなかったら僕の中にショコラティエになるという選択肢はなかったかもしれない。本当に感謝しています。

―すごく素敵な師匠ですね。水野さんのお店で働いたあと、海外にも行かれたんですよね。

水野シェフに背中を押していただいてフランスへ1年間、その後一時帰国して、さらにルクセンブルグに1年間ほど行きました。向こうでも運に助けられて、たまたまスポットが空いていたお店に入ることができました。知らない食材や料理との出会い、チョコレート以外の部分にも見聞が広がって、本当に行ってよかったです。

 

カカオ豆からつくるBean to barチョコレートにこだわる。

―そしてついに東京へ、それも日本橋浜町へいらっしゃることになるんですね。

はい。帰国してタイミング良くお話をいただいたのが「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」をつくるというプロジェクトでした。ただお店をつくるだけじゃなく、まちづくりに関わることができるということで、すごくワクワクしていたのを覚えています。

 

―お店ではベースとなるチョコレートをカカオ豆からつくるBean to barの手法にこだわっていらっしゃいますが、どうしてそうしようと思ったんですか?

日本橋浜町のまちづくりのコンセプトワードのひとつに「手しごと」があったので、海外からのゲストも多いHAMACHO HOTELの中に、世界共通のお菓子であるチョコレートをカカオ豆から手掛けるチョコレート専門店があったら面白いのではないかというのがスタートでした。

カカオ豆を扱うのは初めてだったので、焙煎からカカオ豆の選定まで新しい挑戦の連続。

Bean to Barのチョコレートはざらりとした食感が特徴のお店もありますが、うちはボンボンショコラやかき氷などにも使うので、なめらかさを出すことが大事と考えました。あくまでもBean to barは製法の1手段であり良質のチョコレートを作るために、材料を自家製にしているという感覚です。カカオ豆はベトナムの農家さんから届くものを使用していて、皮などの使わない部分はお店の提灯や包装紙の和紙にまぜたりと活用しています。

 

 

―村田シェフが個人的にお気に入りのお菓子はどれですか?

やっぱり職人の技術とセンスが出る、ボンボンショコラを食べていただきたいですね。なかでも好きなのは地元京都で見つけた青実山椒を使った「山椒」やフレッシュの青紫蘇を使った「紫蘇」です。またアプリコットブランデーを使ったカジュアルなトリュフ「日本橋HAMACHOCO」も、ちょっとしたギフトに喜んでいただいています。カフェスペースもあるので、ここでしか食べられないものをと考えたかき氷はすごく好評をいただいています。新商品を考えるのが好きなので、チョコレートを使ったお菓子は今後もどんどん出していきたいと思っています。

nelがあるから浜町に来るという人を増やしたい。目指すは二号店。

―浜町でお店をやってみていかがですか?

本当に浜町でお店をやることができて良かったです。すでに完成しているまちではなく周囲と一緒に一から作っている感覚が楽しいし、地域の方がすごく温かい。僕にファンレターをくれる子供さんもいてくれて、全部大事にとってあるんです。「大きくなったらここでアルバイトをしてね」って伝えてあります。

また横の繋がりも楽しくて、ご近所の「ブーランジェリー・ジャンゴ」さんとは一緒にクリスマスのシュトーレンを作ったり、土日祝はうちのチョコレートを使ったパン・オ・ショコラを出してくれたりしています。同時期に店舗をオープンした同期でもありますし、個人的にパンが大好きなので美味しいパン屋が近くにあるのはうれしいですね。あと、「パピエ・ティグル」さんが好きなので、ペンなどお店の備品で使わせていただいたり。ジャンゴさんのパンを買って隅田川沿いを散歩するのも最高です。

 

―村田さんにとって浜町はどんな場所ですか?

憧れの東京で僕の夢がスタートした、原点ですね。回り回って東京でお店をやれていることに本当に感謝しているし、それが浜町で本当に良かったです。いま密かな夢が、浜町にBean to Barのチョコレートを使った焼き菓子専門店を開くことなんです。例えばnelのチョコレートをつかった焼きたてのバウムクーヘンだったり、浜町に来ないと食べられないお菓子を用意して、まちにもっとたくさんの人が来てもらえるようにしたい。恩返しというとおこがましいですが、nelが浜町の魅力の一つになれるように頑張っていきたいです。

 

nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO

中央区日本橋浜町3丁目-20-2 HAMACHO HOTEL

営業時間:10:00-18:00 (LO.17:00)

不定休

WEBサイト:https://nel-tokyo.jp

インスタグラム:https://www.instagram.com/nelcraftchocolatetokyo/

 [取材日:2022.9.30]

写真:北浦汐見 文:井上麻子

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