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株式会社建設技術研究所 代表取締役社長 中村哲己さん

―日本橋浜町。かつては、広大な武家屋敷が広がっていた古くから続く江戸の街。歴史と伝統を受け継ぎながら、変わりゆく街の息遣いを、そこで働き暮らしを営む人々の言葉を通して魅力を紐解きながらお届けします。

浜町に本社を構える、株式会社建設技術研究所は創業1963年の老舗企業です。今回は20193月末に代表取締役社長に就任した中村哲己さんに、インフラ整備を軸とした人々の暮らしを支える会社の事業内容をはじめ、災害時の対策や浜町のインフラ事情について教えてもらいました。

日本初の総合建設コンサルタントの仕事。

インフラの整備から環境問題への取り組みまで、御社では幅広い事業を手掛けていらっしゃいますよね。今一度、建設技術研究所が手がける事業内容を教えていただけますか?

当社は日本で最初の総合建設コンサルタント会社です。人々が生きる上で必要不可欠な「社会資本」を整備し、安全、快適、便利な生活を支えています。「社会資本」とは、道路・鉄道・空港に代表される「交通・通信施設」や、上水道・下水道・公園などの「生活環境施設」、河川・ダム・砂防などの「国土保全施設」、電気・ガス供給施設などの「資源エネルギー関連施設」、農道・林道・漁港の「農林漁業基盤施設」など、日頃から人々にとって非常に身近な存在です。当社では国や地方自治体が社会資本の企画立案を行う当初から携わり、そのあとの計画、調査、設計、施工管理、そして完成後の維持管理に至るまで、すべての段階においてコンサルティングを担っています。

プロに学ぶ、災害時のあれこれ。

去年2019年は特に災害の多い年でしたね。中村社長自身は今までどのように災害と関わってきましたか?

私自身は2011年に仙台へ転勤になった際、東日本大震災を経験し4年間東北支社長として災害復旧に努めました。それから九州支社に転勤になった際には、2年目に熊本地震を経験。東日本大震災のとき同様、寝る間を惜しんで復旧活動に尽力しました。去年も台風19号をはじめ当社にはさまざまな支援要請があり、河川事業であれば実際に現場に出向いて堤防の設計を考えたり、雨が降るとどれだけの川の流量があるかを調査したり、早急な対応が求められました。日本全国本当に災害は多いですよね。災害を経験しているのは決して私だけではないですが、災害時はまず冷静になって何をするべきかを落ち着いて考えることが大切だと思います。

大きな災害を2度も経験した中村社長から、災害対策のアドバイスはございますか?

まずは災害が起きたらどうするべきかを事前に考えておくことが大切です。停電時の灯りの準備や食料の備蓄はもちろん、近隣の避難所と避難経路の確認。それに加え、自分が置かれている場所がどんな特徴のある土地で、災害が起きた場合どうなってしまうのかを知っておく必要があります。当社も制作に携わっている各市町村のハザードマップで災害リスクを確認しておくことをおすすめします。
去年台風19号に見舞われた日の夜に、東京で震度4の地震が起きたのを覚えていますか? 中央区は堤防その他の治水施設によって、河川の氾濫、津波、高潮の災害からは守られてはいるものの、複数の災害が同時に起きた場合は安全とは言い切れません。最悪の事態まで考えて備えることが必要です。

災害に伴い、一般の方が利用できる御社のサービスはありますか?

水災害防止に役立つさまざまな情報を網羅した「RisKma」(水災害リスクマッピングシステム)というシステムがあります。36時間先までの雨量分布予報、実績の累加雨量分布をリアルタイムで表示する無料のWebサービスで、スマートフォンアプリからも利用が可能です。大雨が降った際には、内水氾濫の可能性があるエリアを60分先まで確認することができます。雨がもたらす内水氾濫の危険性を予測する国内唯一のシステムで、浸水が起こる前に早期の対策が立てられます。災害時以外でも洗濯物を外に干すか干さないか、今日は傘を持っていくべきかどうかなど、普段の暮らしでも役に立つ便利なシステムです。

知ると楽しい、中央区と土木の知識を深めよう。

御社が浜町や中央区で取り組んでいることがあれば教えてください。

当社では“中央区の魅力”、“土木の魅力”を発信しようと大きく2つの事業に携わっています。1つは2009年から始めた「お江戸日本橋舟めぐり」です。日本橋を活性化することを目的とした「江戸東京再発見コンソーシアム」の一員として、当社の電気ボート「江戸東京号」を用いたクルージング事業の企画運営を行っています。これは江戸時代、賑わいの中心であった日本橋川、隅田川をはじめ、都心の河川を巡りながら江戸東京の記憶を辿る歴史散歩クルーズで、1ヶ月に10日前後、6コースを運航しています。毎年秋には「川のなぜなぜ舟めぐり」という、川を巡りながら当社の土木技術者が都市の社会インフラ、まちづくりについてお話するツアーも開催しています。
2つ目は中央エフエム(84.0MHz)で毎週水曜日の夜8時から放送されている30分番組「ドボクのラジオ」です。これは教養番組ではなく、インフラバラエティ番組です(笑)。普段土木の専門的な話を聞ける機会はなかなかないと思います。はじめは聞きなれない言葉も多いかもしれませんが、土木は誰しもに身近な分野。暮らしながらふと思い出してもらえたらうれしいですね。

浜町のインフラ事情にはどんな印象がありますか?

一般的なインフラに関してはしっかりと整備されています。清洲橋通りや新大橋通りは電柱もなく、街並みは非常に綺麗ですよね。駅も近くに複数あって、交通の便もいい。その他にも、下水道の普及や浄化用水の流入によって水質が良くなった「隅田川」がすぐそばを流れていたり、区立公園としては最も広い「浜町公園」があったり、園内には「総合スポーツセンター」や「浜町運動場」など気軽に体を動かせる場所もある。暮らしを営むには非常に豊かな土地だと思います。
私自身、ここ何年かは転勤続きでしたが、2017年頃、約6年ぶりに浜町へ戻ってきたときは随分と街が綺麗になったなという印象を受けました。電柱もなくなったし、新しいビルも増えた。それでいて、古いものがきちんと残っているのは浜町の街らしさだなと。古い家屋を活用した雰囲気のいい居酒屋さんなんかができていたのも印象的でしたね。

浜町で好きなお店はありますか?

私は災害対応をする人間ですから何かと会社に近いほうがいいだろうと、今は徒歩通勤圏内の東日本橋エリアに住んでいます。会社から家までの帰り道、浜町1丁目にある「鳥生(とりせい)」というやきとり屋でときどき晩酌をしています。心落ち着く味のある名店です。

今後の浜町エリアに期待することはありますか?

私自身、長く日本各地の河川にまつわる事業に携わってきたので、河川を生かした街の活性化には特に携わりたいと思っています。浜町には「浜町防災船着場」がありますよね。対岸にある隅田川テラスのように整備を進めたり、駅から少し離れた場所にあるので、交通アクセスも見直せたらいいですね。当社では現在、茨城県石岡市にてdoor to doorで移動ができる、リアルタイム予約に対応したオンデマンド乗り合いサービスの実証実験をしています。運行ルートや運行ダイヤはなく、出発地や目的地、希望出発時間は利用者のニーズに応じて運行するため、効率的で利便性の高い乗り合いができるというもの。従来の電話予約に加えweb予約を可能とするユーザーアプリや運転手に運行順序や運行ルートをわかりやすく伝えるドライバーアプリの開発によって、利用者、運転手の利便性向上も図ります。今後もさまざまなインフラ技術を生かしながら、浜町をよりよい街へと活性化していきたいですね。

株式会社建設技術研究所

https://www.ctie.co.jp

RisKma 水災害リスクマッピングシステム

https://www.riskma.net/ja/top

お江戸日本橋 舟めぐり

https://www.edo-tokyo.info/ship/

ドボクのラジオ

https://doboradi.jsce.or.jp

 

[取材日:2020.1.27]

写真:鈴木優太  文:北居る奈

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