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株式会社明治座 代表取締役社長 三田芳裕さん

-日本橋浜町。かつては、広大な武家屋敷が広がっていた古くから続く江戸の街。歴史と伝統を受け継ぎながら、変わりゆく街の息遣いを、そこで働き暮らしを営む人々の言葉を通して魅力を紐解きながらお届けします。今回は東京で最も歴史のある劇場として2013年に創業140周年を迎えられた株式会社明治座 代表取締役社長 三田芳裕さんにお話を伺いました。

浜町で140年愛されてきた明治座。私たちの商品は「感動」。

私たちの会社は演劇興行を行っているので、演劇文化の継承と発展を通して社会に貢献していくことを企業理念としています。普段から心がけているのは、顧客満足度を大事にすることです。「劇場に来ていただいたお客様に満足いただくだけでなく、ワンランク上の感動を届けたい。」という想いを先代から引き継いでいます。私たちの商品は「感動」だと思っています。また、お客様だけでなく、従業員の福祉や幸せを追求することも心がけています。それによりお客様の満足度も高まり、ゆくゆくは業績の向上につながると考えています。 もう一つは、日本橋浜町という地域があっての明治座なので、地域貢献を大切にしています。これも先代からずっと引き継いできたことです。

ー先ほど「地域貢献」と仰いましたが、明治26年に千歳座から明治座に生まれ変わったのは地域の方々の協力が大きかったようですね。下町の人情のようなものを今でも感じることはありますか。

浜町やお隣の人形町も含めて、このまちには下町の良さが残っていて、下町だけれども人との付き合いが密接過ぎず、心地よい距離感があるのです。
そこに浜町の人情というか地域の人々の温かみを感じますね。そういった地域性は大事にしていくべきだと思っています。
今はもう廃れてしまいましたが、昔はこのあたりは芳町と呼ばれる花街だったので、清洲橋の両側には多くの料亭が軒を連ねていました。
浜町から隅田川の川岸までが当時はいちばん栄えていましたね。
今でいう浜町公園の北側には洒落た待合さんが並んでいたり、日本舞踊や邦楽の有名なお師匠さんのご自宅もあったので、とても風情があって粋なまちでしたよ。 そんなこともあり、浜町には芸事が好きな方が多かったので、逆に芸事に厳しい土地というイメージもありました。 もうすっかりなくなってしまいましたけれど、待合さんも40軒くらいと芸者衆も150人くらいいましたね。 あとは、昔は堤防がなかったので、まちを歩いていると道路から川がよく見えました。いろんな船が行き交う風景だったり、今とは川の眺めが全然違いましたね。今は高い場所に行かないと川は見えないですからね。

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ー当時は多くの料亭があったなか、現在残っているのは三田社長の家業である料亭「玄冶店 濱田家」さんのみだとお聞きしました。

そうですね。うちだけ取り残されたように残りましてね。なんとかやっています(笑)。
今は芸者衆も少なくなりましたので、お客様には「日本料理レストラン」としてお使いいただいています。
週末には結婚式で利用されるお客様も増えています。結婚式となるとご年配の方もいらっしゃいますから、日本料理のほうが馴染みがあるようでご好評をいただいています。

ー昨今、日本橋エリアに30代を中心に若いご夫婦の移住が増えていますよね。

小さいお子さんをお持ちの若いファミリー層が増えてきていますよね。この周辺でも学校や保育所が足りない状況で、既存のビルをリノベーションして保育施設を設けたり、小学校は生徒が多いので増築したりしていますね。つまり、少子高齢化と言われているなかで、中央区では逆の現象が起きていて、若い世帯の人口が増えているので、そういった状況の中で地域の人々がどのように協調し、まちとして発展していくかが、この地域の非常に大きな課題になっていくのではないでしょうか。個人的には今後は小学校がいろんな意味でコミュニティの軸になって、地域の成長につながるのではないかと思っています。

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ー浜町で好きな場所がありましたらお聞かせください。

浜町公園は昔からよく行っています。犬を飼っていたので、犬を連れて散歩をしによく行きました。20年以上、浜町公園で犬と散歩するのが日課でしたね。今は犬がいないので時々ぷらっと一人で散歩してます。よく行くお店ですと、「浜町藪そば」さんや、お菓子の進物などはいつも「あけぼの」さんを利用させてもらっています。

ー6年後には創業150年という大きな節目の年を迎えますが、今後の展望についてお聞かせください。

戦後から興行の内容や編成は随分変わってきました。今後も演目や出演者の研究をしながら、お客様の変わっていく需要に応えていきたいですね。 明治座の過去のアーカイブには名士と言われた脚本家や演出家、名優によってつくられた舞台がたくさんありますが、それらを今の時代にそのまま上演すれば良いかというと、また違います。伝統あるお芝居を、どうすれば今のお客様に理解してもらえるかを追求し、今の時代性を反映するかたちで展開していきたいと常に考えています。
私たちは江戸時代から続けている「劇場文化」を大事にしてきました。 ただ劇場に来てお芝居を観るだけではなく、お食事やお土産なども一体として考えています。 先代の頃から「楽しいお芝居とおいしいお食事」というモットーを受け継いでおりますが、今後は日本固有の劇場文化をどのように継承していくべきかということが重要になってきますね。 館内の明治座横丁には、通常の幕の内弁当以外にも、月替わりでそのときの公演にちなんだお弁当や、役者さんがプロデュースするお弁当も販売しています。若い方々にとっては幕間に席でお食事をするということが新鮮で楽しいと言ってくれています。

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ー10月から東京駅と日本橋エリアをつなぐ無料巡回バス「メトロリンク日本橋Eライン」の運行が始まりました。

そうですね、Eラインを使って劇場に来てくださるお客様も大変増えました。このあたりはかつて、都電と都バスしか走っていなかったのですが、地下鉄が次々に開通して今は地下鉄が4本も通っていますし、Eラインの運行も開始され非常にアクセスが良くなりました。地域の活性化につなげたいと思っています。今後はT-CAT(東京シティエアターミナル)の活用もしていければ、更にこの地域は便利になりますよね。

ー最後に三田さんが日頃から大切にしていることを教えてください。

劇場と料亭の経営を続けておりますが、お料理はそのとき見て味わってしまえばそれで終わり、お芝居も上演時間が終わればそれでおしまい。要するに両方ともカタチとして残らないものなので、お客様の心のなかに残してもらえるようなものを目指しています。例えばお芝居でしたら、「あのシーンは何年経っても忘れられない」。お料理でも、例えばコース料理であれば「あの一皿はとても美味しかった」。またお店にみえたときに、「この前のあのお料理美味しかったよね」と言っていただけるような、お客様の心に残るようなお芝居や、お料理を提供したいと思っています。ですが、なかなかそう簡単にはいかないですけどね(笑)。
また、9月から新しい試みで、「日本橋ナイトプログラム」といいまして、訪日外国人の方や、日本の若い世代の方たちに向けて夜の公演を開始しました。まだ始まったばかりなので、今後どのように浜町に定着していくのか楽しみです。新しいナイトエンターテイメントとして、日本の歴史と今の日本を知ってもらえるようなショーを提供していきたいと思っています。訪日外国人の方や、日本の若い世代の方たちにどんどん劇場に足を運んでいただきたいですね。

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株式会社明治座
http://www.meijiza.co.jp
〒103-0007
東京都中央区日本橋浜町2-31-1
電話:03-3660-3939
[取材日:2016.11.9]
写真:鈴木優太 文:小野彩

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