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株式会社クレハ 代表取締役社長 小林豊さん

日本橋浜町。かつては、広大な武家屋敷が広がっていた古くから続く江戸の街。歴史と伝統を受け継ぎながら、変わりゆく街の息遣いを、そこで働き暮らしを営む人々の言葉を通して魅力を紐解きながらお届けします。
今回は、トルナーレ日本橋浜町に本社がある株式会社クレハ 代表取締役社長 小林豊さんに街と企業という観点からお話をお聞きしました。

クレハに根付く「ナケレバ、ツクレバ」

ーそれではまず、クレハさんのご紹介と、御社が掲げられている”ものづくり”に対するパッションや考え方について詳しく教えていただけますでしょうか?

当社は創立72周年。売上もグループで1,500億円ほどで、上場企業の中では大きな会社ではないと思っています。一方で、自社で技術を開発していくという、会社のスローガン「ナケレバ、ツクレバ」、つまり世の中に無いモノをクレハが一生懸命自社開発して新しいモノを生み出すということが、私を含め社員全員の基本的なDNAになっております。技術的にどこでも作れるようなモノは作らない。差別化して、お客様にお役立ちできるような商材を市場に出していければいいな、という思いでおります。

企業理念にもあるのですが、立ち止まらずに常に成長していく、変革していく会社でありたいと思っております。たとえば、ラップを販売して56年ですが、ここ十数年は毎年リニューアルしております。こんな会社どこにもないと自負しております。消費者のみなさんに「いちばんうれしいラップになろう」というのがコンセプトなので、そのためには色々なお客様から毎年ご意見、ご要望をいただき、それらを集めて、少しずつでも変えていく。それが当社の社風を代表している取組みだと思います。
ラップ以外の分野でも色々挑戦してきました。医薬品、電気自動車用の部材、アメリカのシェールオイルやガスの採掘の部材を作ったり。この会社をゆくゆくは立派な100年企業にしたいという強い思いがあります。時代の変化や技術の進歩にぴったりミートするような技術開発をしていかなくてはいけませんので研究にも非常に力を入れております。

また特徴としては、本社は浜町ですが、メインの工場は福島県のいわき市にあります。当社は事業所・グループ会社を入れますと従業員が4,100人にものぼりますが、その内いわきには約3,000人が働いており、クレハグループの一大拠点となっています。それゆえこの地でどう地域と共生するか、ということも重要です。私が社長に就任してからは、地域の福祉支援も兼ねて障がい者の方を積極的に雇用する会社を作りました。また呉羽総合病院は、年10万人の患者さんにご利用いただいています。全国各地に工場を分散させずいわきを拠点として集中的に資源投入しています。
私共も東日本大震災で実際に被災し、3ヶ月以上工場が止まってしまいました。地域の復旧復興は順調に進んでいるのですが、まだ苦労している人たちもおられますので、なんとかサポートしていきたいという思いがあります。

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生活と下町情緒の溢れる街

ー小林さんにとっての浜町はどのような街でしょうか。

以前クレハの社屋は、日本橋堀留町にあり、2005年の10月に浜町へ引っ越してきました。向こうは居酒屋が多く、それはそれで、私なんか飲兵衛なので、会社のアフターファイブにすごく良かったです。
11年前に浜町にきた当時は、まだ再開発もあまり進んでいないこともあり、下町情緒を色濃く感じました。今でも少し裏の通りに行くと昔からの住居がありますが、最近10年の間に安田不動産さんの開発もあって少しずつ変わってきましたね。

びっくりするのは、若いご夫婦が子供さんを連れて、この近辺を歩いている。これはもう以前いた堀留町には全く無かった風景ですね。
そこへ、トルナーレでのマルシェ、盆踊りなどを見ると、事務所など仕事用のエリアだけじゃなくて、そういう生活や下町情緒もうまく混在している。新しさがうまく噛み合った、東京都内でもなかなかないような景色があると感じます。
私自身は、港区に住んでおり、そこでも一歩道を入ると昔からの八百屋とかがたくさんあり、お祭りとかもとても大切にしているのです。びっくりするほど東京は、昔のモノとか伝統とかを大切にしているとつくづく思っています。
浜町もお祭りをやっていて、すごくいいところへ来たと思っています。

また、眺めが最高ですね。(インタビューをした会社の応接室)
ここからもそうですけど、私のいる部屋からは、スカイツリーが見えて、東京タワーも見えて、そして筑波山が見えて、日光連山が見えて、ちょっと影になりますが富士山がチラっと見えて、下を見ると浜町公園があり隅田川があり、ちょっと頭が空回りしているときなんかは窓に近づいてぼーっと外を見ています。気分転換にとっても良い眺めの場所だなと思っています。お客さんがいらっしゃるとすぐここに座らずに「ちょっと見てください」と言ってご案内すると喜んでもらえる。少しそこは自慢ですね。

小林社長の考える日本橋浜町の魅力

ー行きつけのお店やスポット、社員みなさんが行っているところはありますか?

正直に言うと、私は堀留町が長かったので、やっぱり人形町方面へ行ってしまうことも多いです。お客様がいらっしゃったときは、フレンチレストランの「ル・ブション」などへ行くこともあります。
最近若手に聞くと、熟成肉が食べられるお店がこの辺に出来たとか、情報はもらっていますが、浜町はどちらかと言うと、昔の良さを残したような、それでいて新しい食材を使ったようなものとか、オーガニックな野菜を使ったものとか、そういうものができると他のエリアと差別化できて良いと考えています。お客さんをご接待すると、「小林さん、銀座とかじゃなくて、できるだけ浜町の雰囲気があるお店を選んで」と言われることが多いです。
お付き合いしている会社のトップの人たちは、宴席が銀座とか神楽坂とかそういうところばかりなので、少し違う昔の雰囲気を漂わせてくれるような、それでいて良い食材を使ったものを出してくれるようなお店を好まれます。一回浜町のお店へご招待なんかすると、「あの辺も色々あるじゃないですか」と言われますね。そういう意味では、浜町近辺は人気があります。お客様に夕方くらいから打ち合わせと言われることがありますが、そのまま私と一緒に歩いていけるお店へ、という狙いで言っているのは分かっています(笑)

あとは、やはり緑道です。時間があるときは緑道へ行きます。桜の季節は必ず歩きます。気持ちがいいですよ。あと浜町公園のほうにも行ってちょっと散歩なんかで橋を渡って清澄白河の方まで行く。風情がまたちょっと違いますからね。そういう意味では浜町は、散歩をして見て歩くのが面白いところですね。
特に社長になってからはあまり歩かなくなってしまったので、できるだけ散歩をするようにしています。前は自宅が千葉だったので、電車で2回乗り換え、通勤だけで1万歩ぐらい歩いていました。今は、車で移動することが多くて毎日3千歩くらいなので、週末たまに時間があるとこの辺を歩いたりします。

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社員全員が輝く会社を目指して

ー先ほどお話に出ていました、クレハ100周年へ向けての取組みとはどういったものでしょうか?

社長直轄のプロジェクトを3つ進めています。昨日も「輝きアッププロジェクト」という女性社員中心のプロジェクトの打ち合わせがありました。前身となるプロジェクトでは女性だけで進めて、後に男性が参加し、現在では女性と男性の混成チームで全社員の活性化を進めております。

ー輝きアッププロジェクトはどういった経緯で立ち上げられたのですか?

私共社員の2割が女性です。昔は、結婚したり子どもを出産するとお辞めになることが多かったですが、今はもっと環境も良くなって長く仕事を続けていく方が増えてきました。ところが、仕事自体は入社した時から変わらないとか、異動もしたことのない方が多くて、もっともっと自分で成長しよう、チャレンジしようというマインドが少し弱くなってしまっているのではないかと感じました。そこで、昨年女性社員を9名指名しプロジェクトを立ち上げました。

そうすると、様々な答申をもらいました。男性社員からは、女性の視点だけじゃないかという意見も出ましたので、男性社員も参加し様々な議論を深めています。女性社員たちからは、「社員に輝いて欲しいという思いが一番あるのは社長なのだから、社長直轄でなければ私たちはやらない」と言われ、社長直轄のプロジェクトにしました。通常は女性の総括リーダーがいるので任せていますが、2ヶ月に1回報告を聞き、少し方向が逸れると修正したり、検討が表面的すぎると、「もっと深掘りしなさい」と議論を戻すなどフォローしています。互いに言いたいことを言い合いますが、その後の懇親会では仲良く楽しく過ごします。お酒の量も本当はほどほどに抑えるべきところなのに、楽しくなってついつい飲み過ぎてしまいます(笑)。

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ー風通しがとても良い会社ですね!

そういう会社にしたい。組織だからピラミッド型ですが、これを壊してやろうと思っています。要するに現場力というか、現場が強くない会社は、基本的に本当の強さじゃないと思っています。そのためには現場をよく知っている、現場の人たちともっと接触を持つ、というのが私の役割だと思っています。色々な場所に行って話しますし、飲みますし、交流して常にメッセージを、こうしたい、こうなろうよ、というのを言い続ける、というのが私の仕事だと思っています。

やはり会社もそうですが、先人たちが築いてくれた、よき伝統、DNAは守らなくちゃいけない。世の中これだけ変わってきているわけですから、私たちの責任としては、これを大切にしながら、新しい物を積み上げていく。そうして非常に重層感のある企業としての構造ができ、社員のみんなも将来に対して「クレハは成長している、だから自分も成長しなくちゃ」と思ってくれると私としては嬉しく思います。

他にはないバランスの取れた街

ーこれから浜町に期待することは何かございますか?

食事ができるお店がもっとあるといいなというのが一つあるのですが、もう一つはこの雰囲気を崩さないで欲しい。
この10年間浜町を見てきましたが、居住空間と仕事の空間がうまくバランスのとれたエリアだと思います。これはとてもアピールできる材料であって、それが丸の内のようなオフィス街になると、全然特徴がなくなってしまうので、この良さを残していければとても良いと思います。

私共は、差別化された技術と商品を出していきたい。クレハが作るものは違うと。例えば、NEWクレラップの広告もそうですが、おかっぱの女の子のCMシリーズのように、こだわる方向性を決めたら徹底的にこだわります。会社もそうやって方向性にこだわってやっていくべきで、他がやっているものをやってどうするの、という思いがある。それと同じように浜町エリアも他の都内のエリアとどう差別化するのかっていうことを念頭におくべきかと思います。個人的には現在でも差別化されたこのエリアの雰囲気があると思いますので、それを残して欲しいという願いがあります。

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[取材日:2016.8.4]
写真:丸山智衣 文:本宮康晴

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